第45回 阿蘇シンポジウム抄録集 2025
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5Nezu Life Sciences  1 自治医科大学医学部 生化学講座 病態生化学部門2 自治医科大学 遺伝子治療研究センター3 奈良良県立医科大学 小児科学4 東京大学大学院 理学系研究科 生物科学専攻6 大阪大学大学院 工学研究科 生物工学専攻 高分子バイオテクノロジー領域7 予防衛生協会高機能改変型 FVIII による血友病 A 遺伝子治療開発〇柏倉 裕志 1,2 中島 由翔 3 堀中 葵寛 4 Tiago Lopes5 古田 勇馬 6 山口 祐希 6Nemekhbayar Baatartsogt1 早川 盛禎 1,2 片貝 祐子 7 内山 進 6濡木 理 4 野上 恵嗣 3 大森 司 1,2目 的血友病 Aに対するアデノ随伴ウイルス (AAV)ベクター遺伝子治療は、長期的な治療効果が期待されるが、高用量ベクター投与が必要なことと、FVIIIの異所性発現による小胞体ストレス(UPR)を要因とした治療効果の減弱という課題がある。本研究では、分泌能と比活性の高い改変型 FVIIIを設計・評価し、低用量かつ安定した発現を可能にする血友病 A遺伝子治療開発を目的とした。方 法イヌ・ブタなど非ヒト哺乳類の FVIII配列をもとに、ヒト FVIIIにアミノ酸置換を導入し、複数の改変 FVIII(FVIIISQ Ver.1–4)を作製した。Huh-7 細胞での一過性発現実験、UPR応答評価、マウスモデル・カニクイザルへの AAVベクター投与実験を行った。また、精製タンパク質による生化学的解析およびクライオ電顕による構造解析を実施した。結 果FVIIISQ Ver.4 は、血友病 Aマウスにおいて FVIII活性が野生型の 8 倍以上に向上し、細胞での UPR誘導も顕著に低減された。構造解析では、A2ドメインの解離性増加と FIXaとの結合親和性向上が確認された。糖鎖修飾の追加も分泌促進に寄与していた。カニクイザルにおける遺伝子導入実験では、欧米で承認されている遺伝子治療薬の 1/30 の低用量ベクターで高い血中 FVIII活性が得られた。考 察我々が開発した FVIIISQ Ver.4 は、分泌効率と比活性の両面で優れており、AAVベクター投与量を低減しつつ安定した治療効果が期待できる。UPRの抑制と翻訳後修飾の最適化が分泌促進に寄与しており、分子機構に基づく新たな FVIII最適化戦略として有用である。52P 022

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